前回のコラムでは消費税が導入された背景や消費税の性質について記載させていただきました。

→ 意外と浅い?!日本における消費税の歴史

今回は消費税の性質である「公平性」は担保されているのか少し考えたいと思いますが、その前に、10月からの税率引き上げと共に導入される軽減税率制度について簡単にお話しさせていただきます。

1.軽減税率とは

今回の軽減税率とは、消費税率は10%でも飲食料品と宅配新聞については8%を適用するといった内容です。少し複雑な内容ですが、消費税は国税が6.3%と地方税が1.7%の合わせて8%が今までの税率でした。

しかし、この軽減税率は同じ8%でも国税と地方税の配分が違うのです。具体的には国税が6.24%、地方税が1.76%の合わせて8%といったものです。

別に支払う消費税は変わらないのだから配分なんてどうでもいいとお思いかもしれませんが、会社の経理や我々会計事務所は一つ手間が増えます。最終的に消費税の申告書を作るにあたっては国税と地方税が明確に分かれているため、この集計を間違えることはできません。経過措置といって、軽減税率の対象となる取引以外にも例外的に10月を過ぎても8%の税率が認められる取引があります。

要は、軽減税率による8%と経過措置による8%が一時的には混在しますが、それぞれ正しく処理しなければならないということです。

2.区分記載請求書等保存方式

軽減税率の導入に伴い、帳簿の記載方法と請求書・領収書等のフォームが若干変わります。軽減税率対象品目の販売を行った場合には、請求書等に軽減税率対象品目の売買である旨を明記するとともに、取引金額は税率区分ごとの合計請求(領収)額を記載することが義務付けられました。これが「区分記載請求書等保存方式」です。

「区分記載請求書」イメージ

(「政府広報オンライン|平成31年10月からは『区分記載請求書等保存方式』に」より引用)

3.適格請求書等保存方式

2.において区分記載請求書等保存方式について説明しましたが、実はこれは経過措置です。つまり一時的なもの。平成35年いや、令和5年の10月から導入が予定されている適格請求書等保存方式(日本型インボイス制度)のための経過措置なのです。

適格請求書等保存方式とは、令和5年10月1日以降の取引については適格請求書発行事業者登録制度を創設し、原則として、「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存を仕入税額控除の要件とするといった内容です。

要は、税務署に「私は適格請求書発行事業者ですよ」という届出を出して、ちゃんと消費税を納めている事業者から買った商品やサービスの提供でないと仕入税額控除は認めないよといったものです。

4.消費税の公平性

消費税は間接税なので、我々消費者が直接的に納めているものではありません。例えば、レストランで食事をしたらその食事代には当然消費税も含まれています。我々から受け取ったその消費税をレストランが国に申告して支払っているのです。つまり、レストランを通じて我々は消費税を間接的に納めているということです。

でもどうでしょうか、本当にそのレストランが消費税を納めているのか考えたことはありませんか? 実は納めていないこともあるんです。でもそれは違法ではありません。一定の要件に当てはまれば消費税を納める義務がないのです。

消費税を納める義務がない事業者を免税事業者と言うのですが、ではこの免税事業者が我々から受け取った消費税はどこにいくのでしょうか? はい、それは事業者の懐にいきます。これを益税といいます。ちゃんと消費税を払っている事業者がいる一方で、払っていない事業者もいる。これで公平性が担保されているといえるでしょうか。
 
3.の適格請求書保存方式は実は、この公平性を担保する役割を担っている面があります。事業者の立場で考えると、消費税は消費者から預かった消費税から事業に必要な経費に係る消費税を差し引いて納めます。

しかし、経費を支払った相手先が免税事業者であった場合に、支払先は消費税を納めていないけど、こちら側(事業者)は消費税を差し引けるといった不合理が生じます(支払う方にしてみれば相手先が免税事業者かどうかなんてわかりませんが...)。適格請求書発行事業者登録制度により、この不合理が解消されるというわけです。

今回はちょっと難しい内容になりましたが、次回は軽減税率の対象品目について詳しくお伝えしたいと思います。

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